「子どもの主体性を育てたい」
保育者なら誰しも願うことです。
けれども、その前に大切なのは問い直すこと。
▶ すでに子どもが持っている主体性を、大人は守れているのでしょうか?
主体性とは何か ― 心理学的な視点から
主体性は「自分で考え、選び、行動する力」と言えます。
心理学では 自己決定理論 がよく知られています。
人は本来、以下の3つの欲求が満たされるとき主体的に行動できると言われています。
- 自律性 … 自分で選びたいという欲求
- 有能感 … できる、自分は成長しているという感覚
- 関係性 … 人とのつながり、安心感
これらはマズローの5段階欲求とも重なります。
つまり、子どもは「主体性を与えられる存在」ではなく、本来 主体性の塊として生まれてきている存在 なのです。
自我の芽生えと“イヤ!”の意味
1歳を過ぎた頃から強く現れる「イヤ!」「自分で!」という主張。
これは発達心理学で言う「第一次反抗期」ですが、決して否定すべきものではありません。
▶ この行動は「自律性」の表れであり、主体性の根っこ。
▶ここを押さえつけると、主体性ではなく「従属心」が育ってしまう。
“わがまま”に見える行動こそ、子どもの成長エネルギーなのです。
マズローの欲求階層と主体性の土台
子どもの主体性が自然に花開くには、心理的な安全基地が必要です。
マズローの理論で整理すると、次のように保育に当てはまります。
• 安全欲求:安心できる環境(アタッチメントの基盤)
• 社会的欲求:仲間や保育者とのつながり
• 承認欲求:存在や挑戦を認めてもらえる経験
これらが順に満たされていくことで、最上位の 自己実現=主体的な活動 が可能になります。
大人の“都合”で芽を摘んでいないか?
保育現場ではよくある場面です。
• 「危ないから」
• 「時間だから」
• 「みんなやってるから」
もちろん安全配慮や集団運営は欠かせません。
しかし、大人の都合で子どもの主体性を奪っていないか? を常に振り返る必要があります。
▶専門職として大切なのは「止める」ことではなく、
「どう守りながら主体性を活かせるか」 を考えることです。
自然が教えてくれる“主体性”
私は24年の保育所経営、50年以上のアウトドア教育で、数えきれないほどの子どもたちと関わってきました。
自然の中にいる子どもたちは驚くほど主体的です。
• 自分で選び
• 自分で動き
• 自分で責任をとる
これは、主体性が「教え込まれるものではない」ことを証明しています。
▶ 子どもは本能的に主体的に生きる存在なのです。
主体性は“育てる”のではなく“守る”
結論はシンプルです。
主体性は「育てる」ものではなく「守る」もの。
• 目の前の“わがまま”をどう受け止めるか?
• 「仕方ない」で片づけていないか?
• 自分の都合で押さえつけていないか?
こう問い直すことが、主体性保育を実現する第一歩です。
まとめ:保育士のまなざしが未来を決める
子どもはもともと主体性の塊です。
大人がその芽を摘まず、守り、環境を整えれば、自然と「自分で生きる力」を育んでいきます。
保育士のまなざしが変われば、保育が変わる。
保育が変われば、子どもが変わる。
主体性保育の原点は、「すでにある主体性を守ること」にあります。