はじめに

私のもとには日々、保育士さんから「子どもの喧嘩をどう対応すべきか」「保護者の目が気になって仲裁に入ってしまう」という相談が寄せられます。
保育所を24年間経営してきた中で、そして今なお研修を通じて多くの保育士さんと関わる中で感じるのは、喧嘩は子どもの成長の証であり、その価値をどう伝えるかが保育士に求められているということです。

子どもの喧嘩は「心の成長」のサイン

喧嘩やトラブルは、大人にとっては都合の悪い「避けたいもの」かもしれません。
しかし保育の発達段階で見れば、それは自然で必要なプロセスです。


一人遊び → 二人遊び → 仲間との関わり → 葛藤や衝突

この流れの中で子どもは 人間関係の土台 を育んでいきます。

保育所保育指針にもこうあります。

「人に対する信頼感や思いやりは、葛藤やつまずきを経験し、それを乗り越えることで次第に芽生える」

つまり、喧嘩を避けさせることは、子どもの心の成長を止めてしまうことにつながるのです。

喧嘩を止めてしまう保育士の心理

多くの保育士さんが子どもに喧嘩をさせてあげたいと思っています。

しかしながら「怪我をさせてはいけない」
「保護者からクレームが来るのが怖い」
こうした理由から、喧嘩をすぐに止めてしまう保育士さんは少なくありません。

しかし、赤ちゃんが立ち上がろうとする時に止めないのと同じように、心の成長も止めてはいけないのです。
喧嘩を通じて子どもは「自分の気持ちを調整する力」「相手の気持ちを思いやる心」「信頼関係を築く力」を身につけます。

保護者対応が喧嘩の価値を守る

喧嘩の価値を理解してもらうには、保護者への説明が不可欠です。

私が園を経営していた時には、
• 入園1か月後の新入園児ミーティング
• 定期的な個人面談

で必ず「喧嘩は成長の証」であることを丁寧に伝えていました。

さらに、喧嘩や怪我があった際には、
• やった子・やられた子の名前
• 経過や対応
を全て保護者に共有しました。

前もって「喧嘩は感謝すべき経験です」と伝えておくことで、保護者からは怒りではなく「お互い様」という言葉が返ってくるようになりました。

園長・リーダーの役割

一人ひとりの保護者に伝え続けることは、正直なところ大変です。
しかしこれは、子どもと保育士を守るための園長の役割です。

保護者対応を疎かにすると、喧嘩が「クレーム」に変わります。
逆に、喧嘩を「成長のチャンス」として伝え続ければ、保護者は安心し、保育士は自信を持って子どもの主体性を守れるようになります。

喧嘩は「避けるべきもの」ではなく「感謝すべきもの」

喧嘩はやった子もやられた子も嫌な気持ちになります。
しかし、その嫌な気持ちを乗り越えることで 思いやり・信頼感・人間関係の力 が育ちます。

だからこそ、喧嘩は「悪」ではなく「成長の証」
子どもの心の成長に欠かせない大切な経験なのです。

まとめ

• 子どもの喧嘩は自然な発達のプロセスであり、成長の証。
• 喧嘩を止めることで失われるものがある。
• 保護者に事前に「喧嘩の価値」を伝えることが、安心と信頼につながる。
• 園長やリーダーが覚悟をもって伝え続けることが、子どもと保育士を守る。

ご案内

私は現在、全国の保育士さん・園長先生に向けて
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で登壇し、現場で役立つ実践的な学びを提供しています。

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