私自身の違和感から
実は、私は子どものころから「みんなで一緒に」がとても苦手でした。
学校でも、みんなで同じことを同じようにやらなければいけない空気に、強い違和感を抱いてきました。
「協調性がない」とよく言われてきましたが、それは単に、私にとって自然な“普通”ではなかったのです。
だからこそ今、保育や教育において当たり前のように続いている「みんな一緒に」の文化を問い直したいと強く思っています。
現代においても日本の保育や教育には「みんな一緒に」という価値観が深く根付いています。
給食、午睡、製作活動──集団生活の随所に現れるこのスタイルは、保育士も子どもも“当たり前”として受け止めがちです。
しかし、「保育所保育指針」を紐解くと、そこに繰り返し現れるのは 「一人一人」 という言葉です。
このギャップはどこから生まれているのでしょうか?
「みんな一緒に」が根付いた歴史的背景
日本社会は長らく「農耕文化」を基盤としてきました。
• 田植えや収穫は、全員で同時に作業しなければ成立しない
• 個性的な行動は「村八分」として排除されやすかった
• 連帯責任の意識が強く、リーダーに従う集団行動が重視された
この歴史的背景から、「協調性=善」という価値観が教育や保育に強く残り、現代の「みんな一緒に」の文化につながっていると考えられます。
保育所保育指針との矛盾
一方で、保育所保育指針は「一人一人の子ども」を主語にしています。
例えば:
• 「発達過程に応じて保育を行わなければならない」(遵守事項)
• 「個人差に十分配慮すること」(遵守事項)
つまり、指針上は「平等」ではなく「個別性の尊重」が大前提です。
にもかかわらず、現場では「日課の維持」や「集団での一体感」が優先されやすく、結果的に“平等”が“個別性”を覆い隠してしまう構造があります。
脳科学から見る「現状維持のバイアス」
なぜ保育士は「みんな一緒に」から抜け出せないのでしょうか?問題は私たちの脳にあります。脳はとっても怠け者なのです。
認知心理学・脳科学の視点からは、次の理由が挙げられます。
• 人は1日約6万回もの判断をしているが、脳は効率化のために「慣れたパターン」を優先する
• 新しいやり方より、繰り返された行動を“安心”とみなす「現状維持バイアス」が強く働く
• 学びで“目から鱗”の体験をしても、現場に戻ると元に戻ってしまうのはこのため
だからこそ、保育士一人ひとりの「意識のアップデート」と「園全体の共通理解」が欠かせません。
変革のカギは「個と組織」
「みんな一緒に」から「一人一人の主体」へ移行するには、二つのアプローチが必要です。
- 個人レベルの学び直し
• 保育士自身が「保育所保育指針」を再確認する
• 自分の潜在的な価値観(スキーマ)に気づく - 組織レベルの旗振り
• 園長や主任が「個別性を尊重する保育」を旗として掲げる
• 園内で「言葉の定義」をそろえる(例:主体性と自主性の違い等)
まとめ:一人一人を尊重する保育へ
「みんな一緒に」の保育は、日本の歴史や文化に深く根付いたものです。
しかし、これからの保育に必要なのは 平等ではなく、一人一人の人権と主体性の尊重 です。
保育士が学び直し、自分の潜在的な価値観に気づくこと。
園全体で「共通の言葉」を持つこと。
その積み重ねが、子ども一人ひとりの「生きやすさ」につながっていきます。
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