また一つ・・・

保育に関する悲しい事件が日本中を震撼させています。

それも相次いで・・・

不適切保育は、この日本において今始まった訳ではなく、内在する問題としてずっと明るみに出る事なく行われ続けて来た問題と言えます。

因みに、2019年で報告されただけでも345件あったそうで、現場の中で働く者であるならば、どの保育所でも普通にあることと自覚している事かも知れません。
これを聞いて、『イヤイヤ〜実際はこんな少ないはずないでしょう!』と思われる人も少なからずいるかも知れません。

保護者様の目から見ると、この事実は恐ろしい事実ですが、もしかしたら『保育士アルアル』と言う軽いノリで片付けてしまっている保育の現実もあるかも知れませんので、この不適切な保育問題はこの機会に保育者一人ひとりが思いの中に留めておくべき事だと考えます。

不適切な保育は何故起きるのか?

(1)変わらぬ配置基準が問題である?

この問題を考えていく上で、様々な見識者がそれぞれの立場で原因を究明していますが、多くの人の意見は保育士一人当たりの国の配置基準が厳しすぎるからである!と言う考えを述べています。
74年間変わることのない厳しい配置基準が、保育士の仕事に激務を強い、余裕のない現状から起こるストレスが引き金となり不適切な保育に至ってしまうと言う論拠となっています。

確かにこの論拠はその通りであり、見識者も現場の保育者達も、皆こぞって海外の配置基準との差を比較して日本の配置基準の厳しさを訴えています。

この様な国の変わらぬ基準に加え、保育士独特の昔ながらの変わらぬ伝統的な慣習が、保育者の不適切な保育に拍車をかけています。

(2)労務環境の問題も大きい

不適切な保育は以下の様な関わりを言いますが、これらの関わりの多くは労働環境の問題に起因するところも大きいと言われています。

① 子ども一人一人の人格を尊重しない関わり

② 物事を強要するような関わり・脅迫的な言葉がけ

③ 罰を与える・乱暴な関わり

④ 子ども一人一人の育ちや家庭環境への配慮に欠ける関わり

⑤ 差別的な関わり

このような不適切な保育が起きる状況として、考えられるのが『意識の問題』と『職場環境の問題』の2点の問題が考えられます。
そしてどちらにも労務管理の問題が深く関わっているといえます。

“かつて問題ないとされていた言動だったが、現在は不適切な保育にあたる言動”が増えています。そうした言動を洗い出し、それをどのように変えていくのかということを園単位で粘り強く研修→実践→検証を行わなければ、変えることは困難です。(認識の問題)
そのためには、保育から離れたノンコンタクトタイムといわれる時間の確保が必要です。また、多様な子どもや保護者に丁寧に向き合い、保育の質を高めるためにも余裕のある時間が必要です。(職場環境の問題)

しかし、保育の現場においては、保育従事者数をギリギリで回したり、シフトの組み方がタイトであったりして時間確保が難しくなっています。

また、更に追加すれば、休憩や休日がしっかり確保できず、行事や上司、保護者等のプレッシャーから持ち帰りを含む残業が多かったり、その残業に対して適切な管理ができておらず割増賃金が支払われていなかったりする場合、保育者は慢性的に疲労し、モチベーションが低下して、その言動に余裕がなくなり不適切保育につながりやすい状況となるのが容易に想像できます。

こうした状況を放置したまま、ノンコンタクトタイムが取れないからと休日等を返上して研修を強制したりすると、保育者の離職につながり、ますますの人材不足となります。

また、職場環境の改善のないままに、個別の保育士の言動のみを非難した場合、対象者からかえって未払いの残業代(休憩が取れなかった分も残業時間と扱われます)の請求(現時点では最長2年、今後最長3年予定)をされるなど、不適切保育の問題が解消されないどころか、園経営に大きな打撃を与える可能性もあります。

つまり、不適切保育の解消のためには、適切な労務管理が欠かせないのです。
そして、適切で余裕のある労働時間管理のためには、たとえば以下のような抜本的な改革が必要になってくる可能性は高いです。

①手間暇のかかりすぎる方法による保育内容の見直し(ときには、保護者の反発も考えられます)
②休憩や休日確保のための余裕ある保育従事者配置(人件費コストがかかります)
③客観的な方法による労働時間管理(保育ICTや勤怠システムの導入。導入コストだけでなく、運用コストもかかる可能性があります。また残業抑制のためのマネジメントも欠かせません)

これらの問題は、特に園長もしくは設置者が真剣に向き合い、一朝一夕ではできない内容も多い為、少しずつ計画を立てて進めていがなければなりません。

(3)根本原因は保育者の人間関係問題

(1)の問題は国の問題であり、私たち末端の保育所が声を上げて叫んだとしても、短期間に響くわけではなく、(2)の問題も経営者の判断で決まる事なので、すぐに解決できる問題でもありません。
しかしこれからあげる保育士間の人間関係の問題は、保育者一人ひとりの自分自身の思いを変換する事で解決することができるので、1番早い近道と言えるかも知れません。

①保育所保育指針を学び、自らの誤った保育観に気づく
保育者が行う保育所の保育は、保育所保育指針を踏まえて行わなければならないことになっています。
しかし多くの保育所の保育は、保育所保育指針を踏まえず未だに伝統的な保育所の保育観によって保育されていることが多く、その保育観ゆえに自分で自分の首をしめてしまっている事もあるようです。

例えば、保育者は『子どもをしつけなければならない』『教えなければならない』と言う観念から、乳児の頃から『寝かしつけ』『残さず食べさせる』『トイレトレーニングをするべき』と言うしつけをしなければならないと言う観念の中で保育している保育者も多くいるかも知れません。

しかし、その様な保育を助長させる『しつけ』と言う言葉や『教える』と言う言葉は、保育所保育指針の中には1つも出てきていないのです。

これらの事は保育者だけでなく、保護者様自身も勘違いをしており、保育所はこの様な『しつけ』をしてくれる所であると思っておられる保護者様も多くいるかも知れません。

これらの勘違いは、保育所有史以来の慣習であり、現在の改定された保育所保育指針にはない価値観である事を認識して保育に当たる必要がある訳ですが、一朝一夕になかなか変わる事は出来ないかも知れません。

しかし保育者一人一人が、指針を学ぶ姿勢を保つ事が出来るならば、この不適切な保育は一歩一歩減っていく事でしょう。

②子どもに対して大声で叫ばない
子どもに対する不適切な保育の中に、大声で叱責したり罵倒したりすることが挙げられています。
これは人間が感じる『恐怖』と言う感情の大きな2つ要因に、『大きな音』と『高い所』があり、大きな声で怒鳴る事は、子どもに恐怖の感情を与えてしまう為であると考えられます。

私達が行う保育で、子ども達に不必要な恐怖心を抱かせる必要はなく、脅すことによって保育者の言いなりに躾ける事は、子どもの人権を否定しだ虐待行為にも繋がる不適切な保育と言えるので、声の出し方には十分注意する必要があると言えます。

この点、私が推奨する『ヒソヒソ面談法』は子ども一人一人との人間関係を円滑にするだけでなく、他の子どもに対する影響力も少ない保育方法ですので是非お勧めしたいと思います。

③保育者の『幸せ』は義務である
保育者が子どもに対して『不適切な保育』をしてしまう心理的な要因は何処にあるのでしょうか?
それは、保育者自身の『不幸感』に有ると言えるかも知れません。
それは人の心理の中に、不幸で有ると『弱いものいじめ』をしてしまう心理的な傾向があるからなのです。

その不幸の原因は、『子どもの命を守る』と言う強いストレスから来るかもしれません。
また、労務環境の厳しさ故に出てくる不満かも知れません。
そして更に、給料の低さ故に生じる理不尽さかも知れません。

これらの不幸の原因と思われる、いくつかのストレス要因を軽減させるために、我が国も給与の処遇改善や事務仕事を軽減する為、ICT化を進める為の補助金を出すなどの施策を講じてくれていますが、なかなか根本的な解決には至っていない様です。

我が国の保育者の離職率の中で、ダントツのトップは人間関係の拗れで有る事を考えると、保育者のメンタルケアに焦点を当てる事が、最も重要な点と言えるでしょう。

対人関係の拗れ故に保育士が不幸感を感じているのであれば、その対人関係の拗れが生じない為のメンタルケアこそが、保育者の幸福感に大きな影響を及ぼす事になります。

ですから保育者一人ひとりが日々の仕事に幸せ感を持つ事が出来る様に支援する事が、この不適切な保育問題を解消出来る重要なポイントであると考えます。

私たちメンタルヘルスラボリンは、これらの保育者のメンタルヘルスに特化した講座を設け、日本の保育者が1人でも幸せな仕事ができるよに支援していきたいと思っております。

このブログを読んでくださっているあなたが『保育者の幸せが子どもの幸せに直結する』と考えておられるならば、いつかきっと私との出会いがある事を信じております。

そしてそれが貴方との運命的な出会いとなる事を、心から信じて出会いをお待ちしております。