はじめに・・・私は個人的にキレる子を問題視していません。

当たり前の事、1つの個性、単なる子供の今の気持ちの表現、心の成長のプロセスと、あまり大げさに考えていません。

ウチの保育所では、小さい時から自由にさせてあげていると、噛んでも引っ掻いても、押し倒してもそれが普通でしょ?とまぁこんな考えです。

親御さんにも、成長のプロセスだよ!心が成長している証だね!

なんてお話ししているので、キレる子に対して問題と感じていなかったのですが、前回の保育心理カウンセラーの講座や体験講座の中でも、園の子供たちにキレる子が多くいる事の話しがあり、ご相談に乗る機会がありましたので、今日はこのキレる子の事について少しお話ししてみたいと思います。

キレる子・キレる要因は?

さてまず、この疑問からお話ししていきますと、キレる子はその子にかかるストレスに関係があります。

キレる子が生まれてから現在に至るまでに、経験したストレスによって心が潰れて中身が吹き出しちゃった状態・・・

例えばお饅頭を潰したら、中身のあんこがブチっと漏れ出した状態みたいな感じです。

私たちの心には、辛い苦しいストレスが加わったときに、受け入れられる許容量があります。

今度は心のバケツでたとえてみましょうか・・・

大きいバケツもあれば小さいバケツもある。

一般的に私たちが言う器の大きい人と言うのは、この心のバケツの容量が大きい人(人格者)のことを言います。

子供の場合このバケツの容量が少ないために、大きなストレスに耐えることができず、吐き出すと言う行為をすることになるわけですが、その吐き出し方には2種類あります。

内に向かうのが自傷行為となり、外にむかう行為が他人に対して切れると言う行動に出てくるわけです。

生まれたばかりの赤ちゃんは、お腹がすいたと言えば泣き、オムツが濡れたと言えば泣き、一人で寂しいからかまって欲しい時に泣き。

泣くことによって吐き出し自分の思いを周りに伝えていますが、この時受け入れられれば良いのですが、受け入れられないと・・・

例えば親や保育者から虐待や超過度のしつけをされたり、不適切な育児・保育をされた時、子供は自分の感情をコントロールできなくなります。

自分の感情や意志を出しても受け入れられず、抑制された我慢を強いられる状態が続くと、泣きたいときに泣けない、やりたいときにやれないなら、親や保育者に笑顔でいなければ受け入れられないと言う反対の感情が働き、自分の本心ではない嘘の感情や行動を表すようになることもあります。

今の子供たちは、自分の心を否定されたり、気持ちや意思を抑圧されて我慢を強いられて生活している子供達も多く、自分の本当の気持ちや意思を表せなくなったストレスが溜まり、親や保育士に従っていた、または従わなければならなかった子がある日突然切れたり、切れやすくなる状態になってしまうのです。

切れる子の親は切れる親である…と言う傾向が多いことからも、親・保育者の切れると言う行動が子供の悪い手本者となってしまっていると言えます。

過干渉・ごまかしにより生じる場合

一方、子供にかかるストレスは、過激に加わるものばかりではありません。

反対に過度に偏った愛情(甘やかし)によっても生じることがあります

そのような親は、子供を愛するが故に失敗することが心配で心配で・・・子供に失敗させないために過干渉となり、子供が遊びたい経験したいと言う気持ちを先回りして失敗しないように備えたり、教えすぎてしまいます。

子供の成長は、経験し失敗しながら葛藤しながら成長していくものですが、子供の自ら育つ成長の力を信じることができないために、子供に逆ストレスを与えてしまうことになってしまうのです。

子供の心が成長していくためには、自分の思いが思い通りにならないことを経験することも必要であり、その心の痛みと自分自身で向き合い、自分の機嫌を自分で消化できるようにならなければなりません。

子供は心に痛みが生じた時、自分でその気持ちを消化する(自分で自らを癒すこと)為に、大声で泣いたり叫んだり駄々をこねたりしますが、このような時・・・もし親が甘やかしおもちゃやお菓子を買ってあげるなどして、子供の気持ちをそらしたりごまかしたりすると、子供は心の痛みが加わった時、自分の不機嫌と向き合えなくなり、自分で自分の機嫌を取れるようになるための学ぶ機会を失ってしまうことになるのです。

このように親の甘やかし(ごまかし)により、子供の心の成長が順調に進まず、心のバケツがいつまでたっても大きくならず、小さなストレスが加わった時でも、切れると言う状況を生んでしまうことになるのです。

食生活から生じる場合

さて、この切れると言う状況は精神的ストレスが加わった時ばかりではありません。
生理的な要因によっても生じやすくなります。

まず挙げられるのが、食生活の要因です。

最近の子供たちの中には食生活の乱れから、空腹時に急激に甘いもの(糖質)をとってしまうことにより、低血糖症を起こしてしまう場合があります。

低血糖症とは、空腹時にジュースやお菓子などの純度の高い糖質を取ることにより、血糖値が急上昇し大量のインシュリンが放出されると、副腎がアドレナリンを分泌し、交感神経が刺激され攻撃的な行動をとるようになります。

これを血糖値スパイクと言い、イライラ・集中力の低下・攻撃性と言う症状が出てくることになります。

また食生活の悪化により、栄養のバランスが悪くなり生じることもあります。

まず挙げられるのがカルシウム・鉄などのミネラル分やビタミンDの摂取不足などが挙げられます。

鉄は、貧血状態を抑え、カルシウムは神経の興奮を抑える効果があり、またビタミンDはカルシウムの吸収を助ける効果がありますが、不足すると切れる引き金となる事も有るのです。

してさらには腸のコンディションの悪化が挙げられます。

腸は第二の脳とも言われていますが、それは脳内ホルモンであるやる気ホルモンと言われているドーパミンが50%、幸せホルモンと言われているセロトニンの生成が90%も、腸内で生成されていることがわかっているのです。

特にセロトニンは成長ホルモンでもあり、腸内のコンディションの悪化は、子供の心身の成長発達に大きな影響があると言えるのです。

睡眠不足から生じる場合

次に挙げられるのが睡眠不足です。睡眠不足は食生活の悪化よりも重大な要因であり、スマホやタブレット・ゲームを寝る前に行う様になると、電磁波やブルーライトの被害により、脳の興奮状態が続くため、良質な睡眠の時間が失われ自律神経のバランスが崩れるために、重大な精神被害を起こすことになってしまいます。

また室内で静止した活動が増加してくると、野外で太陽の光を浴びること、体を動かすことが少なくなり運動不足による健康被害も加わります。

太陽の光を浴びることが亡くなる事によって生じるビタミンDの不足、運動をしないことによって生じるドーパミンやセロトニンなどの生成が少なくなることによって、切れやすくなる子の要因を増幅させることになってしまうのです。

発達障害により生じる場合

そしてもう一つ挙げられる要因が、発達障害の可能性による要因です。

発達障害の中でもADHD(注意欠陥多動性障害)の子どもは切れやすいと言われていますが、これは人間の脳の発達のメカニズムに要因があります。

人間の脳は初めに感情を司る脳(扁桃体)から先に発達し、理性を司る脳(前頭連合野)の成長は、小学校高学年から中学生にかけて特に成熟していくと言われています。

そして一般的にADHDのお子さんは、この脳の成長の速度が数年遅れていると言われているんです。

ですから感情を司る脳である扁桃体がアクセルとすると、理性を司る脳であるブレーキ役の前頭連合野の発達が出来上がっていない子供の脳の状態では、そもそも自分の感情を大人のように理性的に抑えられないのが当たり前、切れると言う行為が出ても致し方ないと言えるかもしれません。

キレやすい子の対処法は?

ではこのような切れる子に対する対処法は、どのようにしていけば良いのでしょうか?

それは今までお話してきた切れやすい子の要因と思われることをなくしていく事が、相応しい方法といえます。

先ず虐待や過度なしつけなどの大きな精神的なストレスを与えないことです。

「子は親の鏡である」と言う言葉に気づき、親・保育者自身が切れない親・保育者になることが最も重要なことだという事に気づいたならば、自ら切れない自分を作るためのワーク(アンガーマネージメント)を行うなどして、切れない自分を作れるようにしていきたいものです。

しかしこれは相当覚悟を持ちカウンセリングを受けるなどして、自己変革のためのワークを繰り返し行う必要が有ります。

そして次に、子供の欲求をしっかりと受け止め、可能な限りやりたい・やりたくないと言う子供の我を受け入れていくことが求められるかもしれません。

そして子供が切れやすいと言う事は、脳の発達過程から行っても理性を司る前頭連合野の発達が未成熟なため起きることだから、あまり大げさに考えすぎないようにして、自然体で育児・保育していくことが重要であると言えるかもしれません。

そして日ごろから、私たち人間の心身の健康は、睡眠・食事・運動の3大要素から成り立っていることを認識し、良質な睡眠・食事・運動習慣を身に付けるための育児・保育を心がけるようにしたいと思います。

キレやすい子に対して親・保育士が出来る事

と言うと・・・

こういった感情が先行して抑えられない子供は、子供の発達過程の上で普通のことであると考え、脳の成長に伴い自制できるようになっていくことを信じて、普通なこと・当たり前のことと捉えてあまり大げさに考えないようにしています。

先日の保育心理カウンセラーの相談会の時に、このキレる子が自分の園でが多いと言うことを相談された方がいらっしゃったので、「そのような子たちは全体の何割位いらっしゃるのですか?」とお聞きしたところ、「全体の2割位です」と言う答えが返ってきました。

「そうなんですね!実はこういった育てにくい子は、どの集団でも必ず2割はいるのが統計的に見ても平均的なことなんですよ!」とお伝えしました。

このように現実も踏まえるようにすれば、気持ちはとても楽になり、私たちの園では今の保育に集中することができるようになっています。

私たちの保育所のモットーは、今を生きる自然体の保育です。

子供たちのやりたいを尊重した自由な保育です。

育て難い子も、障害のある子も、それも個性の一部と見るようにしているので、毎日気楽な保育をする事が出来ています。

K(食う)N(寝る)T(垂れる)も自由で強制する事は一切ありません。食べたい時に食べて、寝たいときに寝るし、排泄したいときに排泄します。

保育者は子供に対して、K(期待しない)H(比較しない)K変えようとしない)C(注意しない)O(教えない)を合言葉に、G(我慢させない)G(頑張らせない)D(努力させない)日々の生活を楽しんでいます。

子供たちの日々の自然な生活の中では、もちろんトラブルもたくさんありますが、その中で子供達同士が教え合い、自然にやって良いこと・悪いことに気づき成長していっています。

こんな普通では考えられないようなことをしている保育所ではありますが、私たち保育者は子供が要求するときにのみ手を差し伸べ、愛情深く抱擁をし、ただただ子供の成長を信じ、自由な活動の場の環境を与えるため、毎日、バスに乗って野外に出かけていく活動を続けています。

こんな現場活動をし続けてあっという間に20年が経ちました。

保育所を始めたばかりの時は無我夢中でしたが、最近周りの保育事情を見聞きするにつけ、私たちのやってきた保育はとてもアウトローでなかなか理解されにくい保育ではありますが、子供たちの明るく生き生きと成長した姿(人間力)を見るにつけ、私たちの保育は決して間違っていなかった・・・と思う今日この頃です。