はじめに

私は長年、保育の質を高めるためには、

「抱っこの質を高めなければならない」

と伝え続けてきました。

すると、時々こんな質問をいただきます。

「抱っこが、そんなに大事なんですか?」

私は迷わず答えます。

「はい。抱っこは保育の根幹です。」

なぜなら、保育は活動から始まるのではありません。

子どもとの人間関係づくりから始まるからです。

・保育の始まりは活動ではなく「愛着形成」

入園したばかりの子どもは、大きな不安を抱えています。

大好きなお母さんやお父さんと離れ、初めての環境で生活を始める。

そんな子どもに、保育士が最初にしなければならないことは何でしょうか。

私は、

  • 読み聞かせ
  • 製作
  • 集団活動

ではないと思っています。

まず必要なのは、

「この先生と一緒なら大丈夫」

と思える安心感です。

その安心感を育てる最もシンプルで、最も効果的な方法が、

「抱っこ」なのです。

・抱っこの本当の意味とは

私が伝えたい抱っこは、

泣いている子をなだめるためだけの抱っこではありません。

悲しい時だけにする抱っこでもありません。

抱っこの本質は、

安心させることだけではないのです。

私は抱っこを、

愛と感謝を伝えるツール

だと考えています。

「あなたがいてくれて嬉しい。」

「あなたは大切な存在だよ。」

「生まれてきてくれてありがとう。」

そんな言葉にならないメッセージを、

身体を通して伝える営みです。

抱っこは「養護」であり「教育」でもある

保育所保育指針では、保育は

「養護」と「教育」が一体となって行われるもの

とされています。

抱っこは安心感を育む「養護」の象徴です。

しかし、それだけではありません。

私は、

抱っこは自己肯定感を育てる「教育」でもある

と考えています。
(保育所保育指針 p.15「教育に関わるねらい及び内容」)

・自己肯定感とは「大切にされた体験」の積み重ね

私は研修でよく、こんな言葉をお伝えしています。

自己肯定感とは、大切にされた体験の積み重ねである。

子どもは一度抱っこされたから自己肯定感が育つわけではありません。

毎日。

何度も。

繰り返し。

受け止められる。

認められる。

大切にされる。

その積み重ねが、

「私はここにいていい。」

「私は大切な存在なんだ。」

という感覚を育てていきます。

それこそが、自己肯定感の土台なのです。

・「ながら抱っこ」が生まれる現場

現場では、多くの保育士さんが葛藤しています。

「もっと抱っこしてあげたい。」

「もっと受け止めてあげたい。」

そう思っている。

でも現実には、

  • 書類業務
  • 行事準備
  • 食事介助
  • 保護者対応

やるべきことが山ほどあります。

その結果、

「ながら抱っこ」

になってしまうことがあります。

抱っこはしている。

でも心は次の仕事へ向かっている。

子どもを抱いている。

でも子どもを見ていない。

・私が増やしたいのは抱っこの回数ではない

すると不思議なことが起こります。

子どもは、

何度抱っこされても満たされない。

そして、

保育士も満たされない。

だから私は思うのです。

増やしたいのは、抱っこの回数ではありません。

保育士が安心して抱っこできる保育を増やしたい。

それこそが、

保育の質を高めることにつながると考えています。

・抱っこは保育士自身も育てる

抱っこは子どものためだけではありません。

抱っこを通して、

子どもは安心します。

笑顔になります。

信頼してくれます。

その時、

保育士も感じます。

「私はこの子の役に立てている。」

つまり抱っこは、

子どもの自己肯定感だけでなく、

保育士自身の自己肯定感も育ててくれるのです。

・抱っこは仕事を止める時間ではない

私はよくこう伝えています。

抱っこは仕事を止める時間ではない。

保育を始める時間である。

愛着が育つ。

安心感が育つ。

自己肯定感が育つ。

そして子どもは、

安心して世界へ飛び出していきます。

・抱っこは甘やかしではない

抱っこは甘やかしではありません。

依存を生むものでもありません。

むしろ、その逆です。

十分に受け止められた子どもほど、

安心して挑戦し、

失敗し、

また立ち上がる。

そして主体的に生きる力を育んでいきます。

まとめ|抱っこは保育そのものである

抱っことは、

愛と感謝を伝えるツールです。

安心を与えるためだけのものではありません。

「あなたがいてくれて嬉しい。」

そのメッセージを届ける保育そのものです。

だから私は今日も伝えます。

抱っこせよ。

愛を伝えよ。

安心感は、

愛着を育み、

自己肯定感を育み、

子どもの主体性を育みます。

そして、その積み重ねが、

子どもたちの未来をつくっていくのです。