ゴールデンウィーク中、埼玉県の認可保育所で、痛ましい事故が起きました。
園庭で午前中の自由時間、園児34名に対して6名の保育者が見守る中での事故でした。

保育園での活動で、子ども達の命を守っていく安全管理マニュアルは、どの保育園でも用意されており、この保育園でもその安全管理マニュアルに従って保育されていた事と思います。

では、なぜこのような事故が起きてしまったのでしょうか?
今日は、私なりの視点で、このような事故が起こらないための、私たち保育所が実践している安全管理についてお話ししていきたいと思います。

保育者の数と事故の相関関係

まず、このたびの事故の検証ですが、これは現段階で公にされていないので、憶測でお話しする事は控えて行きたいと思います。

園児34名に対する保育者の数も6名いたという事なので、保育者の数と事故との相関関係を論じることも出来ませんし、日本の保育者さんは、本当に一人ひとりの子ども達に対して丁寧な保育を行っていますので、こちらの保育所も手厚い立派な保育をされていたことと思います。

それでもこのような事故が起きた・・・ということは、安全管理を保育士の数で論じるのではなく、異なった視点での見方、あり方を考えて行かなければならないと思っています。

安全管理はヒューマンエラーとの闘い

保育所に置いて子ども達の安全を守って行くのは、100%保育所の責任です。保育所とは施設を管理する設置者・施設長をはじめ保育者一人一人であり、安全な施設を作っていくのも人が作っています。

ですから、保育所全体に関わる人全体が子どもの命を守って行くのであり、その現場にいた保育者だけの問題ではありません。

そもそも、人命を守っていく仕事の安全管理は、関わる人が起こしてしまうヒューマンエラーをどう防いでいくか?と言う論点で話を進めて行かねばなりません。

子ども達は大人の予想を遥かに超える危険な動きをし、保育者はその動きを予測して的確な保護をしていかなければなりません。

保育所は、そんな子どもを保護する為に、見守る保育者のヒューマンエラーも踏まえた上で、安全管理マニュアルを強化しつつ、保育者一人一人の見守る能力を高めていかなければならないと思います。

人間は完璧な生き物ではありません。必ずミスはあると言う視点から事故防止を捉えて行かなければならないのです。

安全を見守る現場保育者の悲鳴

日本の保育所は、何か大きな事故が起きる度、上から注意が喚起され、園の中で話し合いが設けられ、危険箇所の再チェックがなされます。

そしてさらに、保育者一人ひとりに安全対策の為の分厚いマニアル項目が、重く増し加わっていく事になるのです。

現場の保育者は、子ども達の安全管理の最前線で闘っていますので、当然の事ではあるのですが、様々な社会事象の変化や重大事故が起きるたびにマニュアルの量が増え、現場の保育者の職務を圧迫させていることも確かであり、その重圧に悲鳴をあげている保育者も少なくないかも知れません。

自由保育の安全管理の難しさ

長年日本の保育は一斉保育が主流でしたが、5年前の新保育所保育指針の改定に伴い、子ども主体の保育が全国的に進められて行くようになりました。

現時点で7割ほどの保育所が子ども主体の保育を推し進めており、この保育を進めていく上で、子どもの自由な発想を尊重して行く為には、子どもに自由遊びの時間や環境を与えて行かなければなりません。

子ども達は、自由な時空間を与えられると、水を得た魚のようにのびのびと遊び始めますが、同時に、一人一人の子どもの動きを見守り、安全を確保していくことが難しくなって来ます。

本来子どもの特質は、KKUW(危険・汚い・うるさい・我が儘)ですから、自由に遊ばせたら、危険なことをするのは当たり前、子ども主体の保育は、自由と安全の表裏一体の保育を迫られていることになります。
ですから子ども主体の保育を進めて行くには、その保育所の環境に合った保育士の安全確保の能力が求められると言えるかも知れません。

この子ども主体の保育を進める保育者の中には、子どもの安全を確保していく為には、現在の設置基準では成し遂げられないと言う理由で、政府に保育者の数の増員を求める意見も多く出されていますが、先も述べた通り、子どもの事故と保育者の数の明確な相関関係がある訳ではなく、これからも日本の私達保育者は、子ども達の自由時間の安全をしっかり担保した上で、子ども主体の保育を進めていくための岐路に立たされていると言えるかも知れません。

この度の事故の原因をピタリ!と言い当てた保育者

私たち認可外保育所Agape八幡山園は、20年以上前からアウトドアの異年齢自由保育を行っており、子ども主体の自由保育における安全管理のスペシャリスト集団であると自負しています。

今回の痛ましい事故を知り、私のもとで20年勤めている保育者に、『この事故の原因は何だと思う?』と問うてみたところ『全体を見る係がいなかったことだと思います』とピタッと言い当ててくれました。

認可外の保育所は、認可保育所から比べると、保育者の人数が限られた(最低基準)中での保育を日常的に行っている為、常に子どもの安全管理に気を抜く事はありません。
それだけではなく、限られた保育者の中で安全を確保していくためのノーハウを持っているため、認可保育所ではなし得ることができない異年齢のアウトドア自由保育を実現することができています。

私達の目からすると、この事故も以前に保育所から出て起きた水死事故も原因はただ1つ、この保育士が回答した通り、全体を見る係の保育者がいなかったことであると思われます。

日本中どこの保育所でも、死亡事故の起きやすい保育現場(夏の水遊びのプールや、日常の午睡チェック等)では、必ず監視係を設けるように義務づけていますが、その監視係(全体を見る係)を子どもが自由に遊ぶ保育場面でも設置を義務付けるべきではないかと思うのです。

この全体を見る係を常時設置することが出来れば、重大事故を防ぐ事が出来るだけでなく、保育所で起きやすい転落事故や噛みつき、ひっかき事故も未然に防ぐことが出来るようになるのです。

当園の場合、この全体を見る係が、子ども達の遊びの満足を得るための室内の環境設定や日誌・ヒヤリハット等も記録することが出来る為、保育者一人ひとりの質の向上を保育現場の中で養う事も出来るようになっているのです。

まとめ

数十年前、保育所での重大事故の代名詞は認可保育所でしたが、現在は、反対に認可保育所での事故がクローズアップされるようになってきてしまいました。

子ども達の命を守っていく事においては、認可も認可外も関係はありません。私たち認可外保育所で培ってきた様々な安全管理のノーハウを、これからは皆様にお伝えできる時がやってきたと思っております。

最後になりましたが、新しい保育所保育指針により進められている子ども主体の保育により、子ども達の自由な遊びの環境が少しずつ保障され始めました。
子ども主体の保育には、子どもの自由な遊びの為の時空間の保障がどうしても必要となります。
ですから、私達は子ども主体の保育を停滞させない為にも、この自由時間の安全管理は絶対条件となり、徹底させて行かねばならない重要事項であると思っております。

もし、このブログを読まれた方で、こんな小さな認可外保育所のノウハウでも参考にされたいと言う方がおられましたら、ホームページの申し込みホームからどうぞ気楽にお声掛けください。
微力ながらお手伝いさせて頂きたいと思っております。

最後まで読んで頂きありがとうございました。