ワンオペ育児・・・この言葉が流行語大賞にノミネートされてから数年が経ち、この言葉をググってみると、多くの専門家たちが様々な対処1法(乗り切り方)を書いていますが、読んでいくとほとんどが似たり寄ったりな対処法で面白くなかったので、今日は私の視点から、日頃自分の保育所の親御さん達にお伝えしている、ワンオペ育児における育児ストレスの対処法(楽しみ方)をご紹介してみたいと思います。

1、ワンオペ育児を楽しむ為の基本姿勢

ワンオペ育児で苦しんでいる人に、いきなり楽しんだ方が良いよ!と言ったとしても、それはなかなか難しい事です。
そこで私達の保育所では、保育所での保育を始める前に、段階を踏んでお母さんに基本姿勢をお伝えすることにしています。

(1)子どもを持った時の覚悟を決める

私は保育園に入園する親御さんに対して、新入園児ミーティングと称して一番初めにお話しすることがあります。それが以下の三つです。

①子供を持ったとき・保育園に入れた時の覚悟について
②子育ての原理原則について
③育児と家事と仕事を成功させる秘訣

この三つのお話を約1時間かけてお話しするのですが、今日はこの子どもを持ったときの覚悟について少し話してみたいと思います。

一口に覚悟と言うと大袈裟ですが、私は私の保育所に入園して頂くお母さんに、以下の3つの覚悟をして頂く事をお願いしています。

①子どもが自分より先に死んでしまった時の覚悟
②自分の子どもが、人様の子どもを殺めてしまった時に土下座をする覚悟
③ご主人がいなくなってしまった時に、自分一人で子どもを育てていく覚悟

保育園に入園する時に、当然いきなりこんな話をされて戸惑うお母さんもいらっしゃいますが、私自身も6人の子どもを育てた経験から、自分が子どもの病気や怪我で4回も救急車に乗ったことをお話ししながら、長い人生の中で育児をしていると様々な事件がある事をお話ししつつ、子どもを授かった時に、もしもの事がある時の事を覚悟しておく必要をお話ししています。
人は「こんな事あるはず無い!」と思っていると、ちょっとの事件でアタフタしてしまうのですが、あるかも知れない最悪の事態を覚悟していると、ちょっとやそっとの事で動じなくなるので、心の片隅にでもこの思いを入れておく事をお勧めしています。

また、人の思いは意図的にポジティブ思考でいないと、自然にネガティブなことを考えてしまう傾向(自動思考・スキーマ)がありますので、このような人の自然な思考の傾向も理解していただいた上でこの覚悟の話をすると、今目の前に子どもが生きていることだけで感謝することができるので、ネガティブな思いのスパイラルに陥ることが少なくなります。

(2)旦那をあてにするな

ワンオペ育児の原因を探ってみると、一つには配偶者が育児支援に関われない現状が浮き彫りになっています。
2016年社会生活基本調査(総務省)によると、6歳未満の子どもをもつ夫(夫婦と子どものみの世帯に限る)の1日当たりの家族育児時間は1時間23分、妻は7時間34分です。
1996年の調査では、夫の家事育児時間は38分だったので、それに比べては増加しているものの、変わらず妻の負担が大きいです。
ちなみに1996年では、妻の家事育児時間は7時間38分でしたので、あまり変化はありません。
そして更に、2020年の男性の育休普及率は未だ、12.69%であり、育児ストレスを抱える妻は以下の様な状況を抱えています。

①配偶者の帰宅が遅い
②配偶者の勤務が夜間勤務など不規則
③配偶者が単身赴任などで家にあまりいない
④離婚や死別によりシングルである
⑤配偶者が「子育ては楽」と思っている、「家にいるのになぜ家事ができていないの?」と口にするなど子育てに無理解である

④の離婚や死別によるやむ負えない事情であるならば、一人で育てる事の覚悟はできてくるものの、⑤の配偶者の無理解はストレスに追い討ちをかける事になってしまいます。

しかし、この配偶者が育児に関わらない事のストレスは、妻が旦那に対する「依存心や甘え」が原因となっているので、はじめから当てにしていなければ、不平不満は生じる事は少なくなるかも知れません。

ですから私は、お母さんに対して、子育ては初めから「旦那はあてにするな!」と言っています。
そもそも男親は、子ども視点から見ても育児に適していないと言えるからです。

☆ある子どもたちに、こんなアンケートをした話があります。

「お母さんが悲しい顔をしているときに、あなたも悲しい気持ちになりますか?また反対に、お母さんが楽しい顔をしているときに、あなたも楽しい気持ちになりますか?」

この質問に対して、「ハイ!」と答え、「イイエ!」と答えた子ども達はそれぞれ何割いたでしょうか?

回答は、ハイ!と答えたのが9割、イイエ!が1割でした。

そして同じ質問をお父さんに変えて質問した時に、回答はどうなったでしょうか?

その回答は、ハイ!と答えたのが1割、イイエ!と答えたのが9割と言う、母親と全く正反対の結果が出たのでした。

この結果からみても、男親は子育てに適していない事が分かり、男親は子育てとは異なった役割を果たすように出来ていると思われます。

では男親の役割とは何でしょうか?

それは、母親が安心して心地よく育児に関われる環境を整えてあげる事だと思います。

十分な収入を得て家計を安定させることや、家に帰ったら妻の言葉によく耳を傾け、話を良く聞いて受け止めることかも知れません。
また時として、子育ての為に停滞している家事の手伝いをする事も含まれるでしょう。

自分の子育て時期の経験(私は5年間に4人の子どもが出来ました)から言うと、妻はこの時期私が家に居る時は、兎に角子どもと遊んで欲しかったと言っていました。きっと子どもから離れて僅かな時間でも息抜きが欲しかったんだと思います。

※この例で私は、決して男親が育児に関わってはいけないといっているのではありません。
人は皆それぞれ個性があり、適性と言うものがありますから、夫と妻の役割が逆転していたとしても何も問題があることではありません。

子育ては、夫婦がお互いに愛し合い、協力し合いながら行えることが理想と言えるかも知れませんが、この世の現実は理想とはかけ離れたことの方が遥かに多いと覚悟すれば、はじめから「旦那はあてにしない」方がずっと気楽に育児ができると言えるかも知れません。

(3)幸せにする順番を自覚しよう

この様なワンオペ育児で悩んでいる人たち(ノイローゼ状態・鬱状態になっている)の多くには、ある思いの傾向(自動思考・スキーマ)の共通点がある事が分かります。

それは、お母さんの性格がとても真面目で、完全主義者的な傾向がある事です。

またそれに加え、以下の様なワンオペ育児の状況が重くのし掛かります。
真面目なお母さんは、何をするか予測できない子どもから目を離してしまうと思いがけない事故に繋がってしまうかも知れない、ほとんどの時間子どもから目が離せないことはもちろん、命を守らなければいけないというプレッシャーを一人で抱えてしまうのです。

●慢性的な睡眠不足夜の授乳や夜泣き対応をワンオペで行っていると、十分な睡眠時間を確保することができません。また、その状況が毎日続くため慢性的な睡眠不足になってしまいます。睡眠を十分に取ることができないということは想像以上の過酷さで、身体的はもちろん精神的にも大変辛いものです。

●常に必要な食事の補助1人で食事をすることができない幼い子どもには、補助が必要です。授乳中の赤ちゃんならばミルクの準備や授乳時間のスケジュールを組む必要もあります。食事がスタートしても、なかなか食事が進まない子どもも多くいるでしょう。しっかり食べてもらうまで、長い時間子どもの食事につきっきりになることもあります。

●子どもを見ながら家事をこなすワンオペ育児をしながら家事をこなす場合も、子どもから目を離すことができません。子どもの様子に気を配りながら多くの家事をこなしていきます。子どもが途中で泣き出したりぐずったりするたびに家事を進める手を止めて、子どもをあやす必要も出てきます。集中して家事に取り組むことはなかなかできません。やらなければいけないことは多くあるのに、思うように家事を進められないストレスを抱えてしまう方もいるでしょう。

●一人で子どもをお風呂に入れるワンオペ育児の中でも「お風呂」は特に難易度が高いもの。お風呂に入る前の事前準備も必要です。小さな赤ちゃんとのワンオペお風呂であれば自分が体や髪を洗っている間に赤ちゃんが待っている場所の用意や、お風呂から出た後のバスタオル、オムツや着替え、保湿剤などの準備も必要です。お風呂を嫌がる子どもをうまく誘導し、泣いたり騒いだりする中、対応しなければいけません。子どもから目を離すこともできず長い時間子どもを待たせることもできないため、自分自身がゆっくりお風呂に入ることは難しいでしょう。

●寝かしつけ寝かしつけは、子どもがなかなか寝ないと終わりが見えないため、大人は辛抱が必要です。抱っこでしか寝てくれない子どもや、長い時間添い寝をしないと寝てくれない子どももいます。ようやく寝てくれたと思って子どもを抱っこからおろしたり、ママやパパがベッドから離れたとたん、目を覚ましてしまって振り出しに戻るなんてこともあります。寝かしつけの時間帯はワンオペ育児の疲れのピークですから、一層大変に感じるものです。

●夜間対応夜中の授乳や夜泣きの対応などがあれば、こまめに起きる必要があり、ぐっすり眠ることはできません。寝てくれたとしても寒くないか暑くないか、ベッドから落ちそうではないか、など気にかけることは多くあります。このように、ワンオペ育児は一日の様々な場面で違った大変さがあります。このようにワンオペ育児は、一息つけたとしてもゆっくり休むことはなかなかできません。

この様なワンオペ育児の苦しい状況により、真面目なお母さんは、自分の産んだ子に対する愛ゆえに、日々の責任感に押しつぶされそうになってしまうのです。

ワンオペ育児をしている真面目なお母さんのほとんどは、自分の今の時を犠牲にして子どもに尽くしています。これが母親としての責任、あるべき姿だと思っているのです。
これは母性あるが故に、致し方ない思考ではありますが、自己犠牲を払って尽くしている母の姿を、肝心の子どもはどの様に感じているでしょうか?

もしかしたら、子どもを愛しているが故に「子どものために!」と思って行なっている行為や自分の発する言葉も、子どもはその気持ちを受け取れていないかも知れません。

私は、このような悩みを抱えているお母さんに対してお伝えしている話の中に、「幸せになるの順番」と言う話をします。
それは、お母さんが自分の子どもに幸せになって貰いたいと思ったら、「先ずは自分自身が幸せにならないといけないよ!」とお話しします。
「自分を犠牲にして我が子の幸せを考える事を多くの母親はしますが、それは順番が逆なんです。」先ほどの子ども達に対するアンケートでもわかる様に、「子どもを笑顔にするためにはまずお母さんが笑顔になることが必要なんですね!」
ですからお子さんの幸せを考える前に、先ず自分の幸せ(自分が笑顔になれる事)を考えて行きましょう!とお伝えしています。

真面目なお母さんは、「自分の幸せは二の次」と考えている方が多い様ですが、先ずは堂々と自分の幸せをいの一番に考える様にしたいものです。