「保育所保育指針って、書いてあることは全部やらなければいけないんですよね?」
保育所保育指針についてお話しすると、保育士さんからこんな質問をいただくことがあります。
私はこの言葉を聞くたびに、
「少しもったいないな」
と思います。
なぜなら、保育所保育指針は、私たち保育士を縛るために作られたものではないからです。
むしろ私は、
保育所保育指針を正しく理解することで、私たちの保育はもっと自由になる
と考えています。
そして、そのために大切なのが、
「指針に書かれている言葉を丁寧に読むこと」
なのです。
・保育所保育指針は「保育士を縛るもの」ではない
保育所保育指針について考える時、まず知っておきたいことがあります。
指針に示されている事項は、すべてが同じ意味、同じ重さで書かれているわけではありません。
大きく捉えると、
- 遵守しなければならない事項
- 努力義務が課せられている事項
- 保育者の創意工夫や裁量に委ねられている事項
があります。
つまり、
「指針に書いてある=すべて同じようにやらなければならない」
ということではありません。
ところが、この違いを理解しないまま指針を読んでしまうと、
「全部やらなければいけない」
という思い込みが生まれてしまいます。
すると、保育はどんどん苦しくなっていきます。
「これもしなければ……」
「あれもしなければ……」
「指針に書いてあるから……」
いつの間にか、
子どものための保育ではなく、指針に書かれていることをこなす保育
になってしまう可能性があります。
私は、そこに大きな違和感を感じています。
「やらなければならない」と「工夫してよいこと」を分けて考える
保育所保育指針には、私たちが守るべき大切なことが示されています。
だからこそ、指針を土台にすることは非常に重要です。
しかし同時に、その土台の上で、
「どうやって子どもたちと関わるのか」
を考えるのは、私たち保育者です。
園の環境も違います。
子どもたちも違います。
保育士も違います。
だからこそ、すべての保育を一つの型にはめることはできません。
守るべきことを守った上で、子どもたちを見ながら考える。
環境を工夫する。
関わり方を考える。
そこに保育士の専門性があるのではないでしょうか。
守るべきことが分かるから、保育は自由になる
私は、
保育所保育指針は保育を縛るものではない
と思っています。
むしろ、
守るべきことを明確にすることで、私たちに自由を与えてくれるもの
なのです。
「ここは守らなければいけない」
「ここから先は、保育者が考えていい」
この違いが分かると、
「こんなに自由に考えてよかったんだ」
という開放感が生まれてきます。
・「受け止める」と「受け入れる」は同じではない
そして、保育所保育指針を読む上で、私が特に大切にしてほしいと思っているのが、
言葉を丁寧に理解すること
です。
その代表的な言葉の一つが、
「受け止める」
です。
保育の現場では、
「子どもの気持ちを受け止めましょう」
という言葉をよく耳にします。
ところが、この「受け止める」を、
「受け入れる」
と同じ意味で捉えてしまうことがあります。
ここには、大きな違いがあります。
・子どもの気持ちを受け止めるとは?
例えば、子どもが友達を叩こうとしているとします。
その時、
「叩きたいほど悔しかったんだね」
「嫌だったんだね」
「悲しかったのかな」
と、その子の気持ちを理解しようとすることはできます。
これが、
「受け止める」
ということです。
しかし、
「じゃあ叩いていいよ」
とはなりません。
叩くという行動まで認める必要はないのです。
つまり、
思いは受け止める。
でも、行動を受け入れるとは限らない。
ということです。
受け止めることと、要求を受け入れることは違う
例えば、子どもが、
「帰りたくない!」
と言ったとします。
「まだ遊びたい」
「もっとここにいたい」
その気持ちは受け止めることができます。
「まだ遊びたかったんだね」
「帰りたくないくらい楽しかったんだね」
と、子どもの思いを理解しようとする。
でも、
「じゃあ今日は帰らなくていいよ」
と、その要求そのものを受け入れる必要はありません。
ここにも、
「受け止める」と「受け入れる」の違い
があります。
「気持ちは受け止める、行動は適切に支える」
ここは、保育士としてとても大切なところだと思っています。
子どもがどんな気持ちを抱いているのか。
なぜ、そのような行動をしたのか。
まずはそこを見る。
そして、その気持ちは受け止める。
一方で、人を傷つける行動などについては、安全を守るために止めることも必要です。
つまり、
子どもの気持ちを否定せず、行動については適切に支える。
この二つを分けて考えることが大切なのです。
・子どもの「やりたい」を全部受け入れる必要はない
「子ども主体の保育」と聞くと、
「子どもの言うことを全部聞くこと?」
「子どもの要求を全部叶えること?」
と考える方もいらっしゃるかもしれません。
私は、そうではないと思っています。
子ども主体とは、
子どもの思いを大切にしながら、その子自身が育っていくことを支えること。
そのためには、大人が判断しなければならない場面もあります。
子どもの気持ちを受け止めることと、
子どもの要求をすべて受け入れることは、
同じではありません。
この違いが分かるだけでも、保育士の心はずいぶん楽になるのではないでしょうか。
「子どもの願いを受け止める=全部叶える」ではない
私は研修の中で、よくこんな言葉をお伝えしています。
受け止めることは大切。
でも、受け入れることとは違う。
子どもが、
「嫌!」
「やりたくない!」
「もっと遊びたい!」
「自分でやりたい!」
と言った時。
まず、その言葉の奥にある思いを見る。
その子の気持ちを理解しようとする。
それだけでも、保育士と子どもの関係は大きく変わります。
・保育所保育指針の言葉を丁寧に読む
ここで、もう一つ大切にしたいのが、
「言葉そのものを丁寧に読む」
ということです。
保育の現場では、
「ねばならない」
という言葉と、
「努める」
という言葉では、その意味が違います。
同じように、
「受け止める」
と
「受け入れる」
も違います。
似ているように見える言葉でも、意味を丁寧に考えてみる。
その積み重ねが、保育士の専門性につながっていくのだと思います。
「こうしなければならない」という思い込みから自由になる
保育士さんの中には、
「これをしなければいけない」
「こうするのが正しい」
という思いを抱えて、苦しくなっている方も少なくありません。
もちろん、責任を持って保育をしているからこそ生まれる悩みです。
だからこそ、
「本当に、これはしなければならないことなのだろうか?」
と一度立ち止まって考えてみてほしいのです。
指針を読み直す。
言葉の意味を確認する。
そして、自分たちの保育を振り返る。
すると、
「今まで当たり前だと思っていたけれど、少し違う捉え方ができるかもしれない」
という発見があるかもしれません。
・保育の質を高めるために必要なのは「言葉を理解すること」
保育の質を高めるためには、
新しい知識を学ぶこと。
新しい技術を身につけること。
もちろん、それも大切です。
でも私は、それと同じくらい、
「今ある言葉を正しく理解すること」
が大切なのではないかと思っています。
保育所保育指針をもう一度読み直してみる。
「なぜ、ここではこの言葉が使われているのだろう?」
「この言葉はどういう意味なのだろう?」
と考えてみる。
すると、今まで当たり前だと思っていた保育が、違って見えてくることがあります。
・保育所保育指針は、私たちに「自由」を与えてくれる
保育所保育指針を、
「守らなければならないルール集」
として読むのか。
それとも、
「子どもの育ちを支えるための土台」
として読むのか。
この違いによって、保育士の感じる自由度は大きく変わるのではないでしょうか。
守るべきことを明確にする。
その上で、
子どもを見る。
環境を考える。
保育士自身が工夫する。
私は、それこそが保育の専門性だと思っています。
・子どもファーストの保育をするために
私たち保育士は、保育所保育指針を土台に保育を行います。
だからこそ、指針を「やらなければならないことの一覧」として見るのではなく、
「子どもを理解し、自分たちの保育を考えるための土台」
として、もう一度読み直してみてほしいのです。
指針に書かれている言葉を理解する。
その意味を考える。
そして、自分たちの保育に落とし込んでいく。
そこには、保育士一人ひとりの専門性があります。
まとめ|言葉が変わると、保育観が変わる
私は、保育所保育指針を学ぶことは、
「できることを増やすこと」
だけではないと思っています。
むしろ、
「しなくてもいいことに気づくこと」
でもあると思っています。
「これは本当に必要なのか?」
「これは指針に書いてあるからやっているのか?」
「それとも、子どものために必要だからやっているのか?」
そんな問いを持ちながら、もう一度指針を読んでみてください。
すると、
「こうしなければならない」
と思っていた保育が、少しずつ変わっていくかもしれません。
保育所保育指針は、
私たちを縛るものではありません。
守るべきことを明確にすることで、
私たちに保育の自由を与えてくれるものです。
そして、その自由の第一歩は、
言葉を丁寧に読むこと。
そして、
子どもの願いを受け止めること。
なのではないでしょうか。
言葉が変わると、保育観が変わる。
保育観が変わると、
子どもとの関わりが変わる。
子どもとの関わりが変わると、
保育そのものが変わっていく。
だから私は、これからも保育所保育指針を土台に、
子どもファーストの保育
を一緒に考えていきたいと思っています。
